身体を使った目的活動

1.行動が引き起こされやすい環境を作る

目の前の環境→行動

積み上げられているブロック   

→手で押して倒す

ホワイトボードにつけられた枠と
ぴったりはまる型 

→型を枠にはめる

ジャンボマットのトンネル    

→くぐっていく

ベニヤ板の坂とビー玉

→ビー玉を転がす

少し高いベニヤ板      

→歩いてきてジャンプする

ジャンボマットのお山

→上って滑り降りる

ヒトを含む動物の行動は環境の中から自分の運動能力でできる情報を取り出し、それに調和するように行動が 引き起こされてくると言われています。これをアフォーダンスと言います。

目の前にブロックが積み上げられていたら、倒してみたくなるように、目の前の環境が行動を自然と誘発するというわけです。最初は大人に誘導されて始めても、すぐに自発的であり能動的な行動になりやすいです。1つ1つは小さな達成感かもしれませんが、行動した結果が分かりやすいので、すぐまたやりたくなって何回も繰り返していると満足感が深まってきます。

2.全身や手先を使った活動で達成感を味わい、目的と手段のある遊びのレパートリーを広げる

本来、乳児は驚くほどの能力をもっていて、外界に対し、好奇心に満ち溢れ、人刺激に強い反応を示すなど大変能動的な存在であることはよく知られています。

人の顔や目をじっと見るように、人を引き付ける力が非常に強いので、親子の間での密接なやり取りが頻回に生じやすく、感情・行為・認知などの共有化が進みやすく、ことばを理解し、親と同じ言葉を使うようになると言われています。

しかし、何らかの発達の遅れがあって来所される子どもたちは、周りのものや人に働きかける好奇心や能動性が全般的に弱いことがよく見受けられます。そこで、子どもたちの好奇心をいかに引き出し、感情を湧きあがらせることがまず、重要になります。キッズコミュの活動は面白くて刺激的なので子どもたちの感情を沸き立たせ、より能動的になっていくと思われます

ブロック倒しやジャンボマットのトンネルくぐりなど、状況との即応的な活動からベニヤ板の上を目標に向かって歩いていく、滑っていく、駆け降りる、ジャンボマットのお山を登って滑り降りるなど目標に到達するまで時間がかかり、努力感が必要な場合、目的意識を持続する必要があります。

また、トンネルくぐってボーリング、ブロック渡ってでんぐり返しなど、連続した行為も2つの行為の前後関係を意識することになります。

なお、ジャンボマットを乗り越えて旗を取ってくる活動の場合、障害を越える行為が旗を取ってくる行為の手段として意識されます。箱車に乗って紐を引っ張って前に進む活動では、紐を引っ張ることが前に進むための手段であることに気づいていく必要があります。更に、ボールを投げて積んであるブロックを倒す場合、ボールを投げることが手段としてはっきり意識されることになります。

目的と手段がはっきり分化している活動を面白く感じて、何度もやろうとするようになると、いろいろな遊びにその関係を応用するようになります。すると、いろいろな手段が思いつくようになり、遊びのレパートリーが格段と広がって行きます。

目的と手段の分化は行動に移る前にこうすればこうなるというシミュレーションの機能が働き始めます。この時、大人からの声掛けも行動に合わせて行われています。例えば、旗取りゲームでは、「よーいスタート!」「そのマットを乗り越えるのよ!」「旗の棒をまっすぐ上にあげるのよ」「ジャンプしておりて」「その旗をお母さんに渡して!」などずっと続けて声掛けされます。先読みしながら声掛けを聞きながら活動することが、先読みの想定が複雑になると忘れないように。ことばでも考えるようになってきます。

活動している時は活動することに集中しているので想定していることにあまり気づいていませんが、何回も繰り返している記憶に刻まれているので、自然と活動の流れを想定する可能になります。しかも他の子も同じ想定をしていることが重なって共通のルールが生れるのではないかと考えています。その想定がことばにすることも可能なレベルまで進むことが、例えばじゃんけんゲームで「負けたら降りて、勝ったら前に進むのよ」という規則性に従うルールが生れてくるのだと思われます。