言語発達について(説明)

人間の赤ちゃんはどのようにして言葉を話すようになるのでしょうか?

特に教えたわけでもないのに、いつの間にか言葉を話すようになっていたというのが、子どもを育てたことのある母親たちの印象ではないでしょうか?それが、ある時期になると大体の乳幼児がお座りや歩行ができるようになるのと同じように、言語獲得も生得的な行動だと言われる所以であります。

しかし、日本語や英語、中国語などそれぞれの幼児が住んでる母国語を話すようになるわけですから、見本となる言語環境が必要であることも確かなことです。周りの大人たちが話していることばに意味があるということ気づき、段々その意味がわかってくる乳幼児の能力はすごいとしか言いようがありません。何億という脳神経の繋がりが生じて、ことばの意味を掴んでいくのだと思われます。乳幼児がどのように、ことばの意味を掴み、話し始めるのかについて、以下のような発達段階が考えられます。

 

1.情緒的交流が中心で、保護者解釈の段階(0ヶ月~12ヶ月)

2.物の名前がわかり始める段階(12ヶ月~1歳6ヶ月)

3.2つのことの関連性に気づき始める段階(1歳半~2歳前後)

4.3つのことの関連性に気付き始める段階(2歳前後~3歳前後)

5.重文・複文が出てきて因果関係の表現が発展する段階(3歳~5歳)

6.現前事象から独立した言語体系が確立される段階(5歳~6歳)

 

1.情緒的交流が中心で、保護者解釈の段階(0ヶ月~12ヶ月)

赤ちゃんは欲求の塊だと言われます。快・不快の生理的表現がとても激しいです。これは、最も依存的な人間の赤ちゃんが生きていくために安全を確保する手段であり、コミュニケーションの原点でもあります。

この激しい欲求に応じて、母親の育児行動がスタートします。あやしたり、おっぱいをあげたり、おむつを替えたりすることになります。そして、赤ちゃんの欲求は生理的表現にとどまらず、母親の目をじっと見て、話しかける声にじっと耳を澄まして、口元の動きに大変興味を示すようになります。自分でも声を出したり、笑ったりします。そして、相互に見つめ合ったり、声を出し合ったり、笑い合ったりします。

その為、人間の赤ちゃんはもともとコミュニケーションが成立し易い特性を持って生れて来るのではないかと考えられています。小さくて可愛いとか、よく声を出すとか、よく笑うとか、人の目とか口にとても興味を示すとかです。それで、大人も赤ちゃんを見ると自然にトーンの高い独特の声掛けで話しかけたくなるようです。すると赤ちゃんもその独特の声掛けを喜ぶようなのです。

また、赤ちゃんは好奇心の塊でもあります。とにかく、いろんな物をじっと見て観察しています。部屋の空間にあるものを見つくしていたり、動きのあるものを見ているだけでも飽きることがありません。物を布で隠して布を取るとそのものが現れる遊びだけでずっと感動しています。顔を使ったいないないバー遊びでも、物が人の背中からパット目の前に出す遊びだけでも大喜びになります。

そして、自分でも何か振って音がしたり、何かを落として転がるのを見ていたり、上から吊るされている紐をひっぱって鈴が鳴ったり、ハンカチを引っ張って上に乗っている物を取ろうとしたりして、自分の行った行為の結果を確かめる遊ぶに夢中になります。そして、思った通りにできるとにんまりして母親の方を見ます。なかなかうまくできないと、怒って母親を呼んでやってもろおうとします。そうして、行為の結果を他者と共有するようになります。

赤ちゃんはとても能動的な存在ですが、まだ、外の世界がどのようなしくみで動いているか認識できているわけではありませんし、今湧きあがっている感情もどうしてそうなったかわかっていることは少ないし、対処法もわかりません。ただ、ワーワー泣いていてどうして泣いているのかわからないことも多々あります。そこで、母親があやしたり、おっぱいをあげたりしてみて、泣きやむと結果的に抱いてほしかったのか、お腹空いていたのかなどがわかるわけです。赤ちゃんの行動や表現は母親の解釈によって意味が出て来ることになります。ですから、母親の赤ちゃんへの感情移入と推測力が重要となります。

赤ちゃんの行動は最初から目的的に活動しているというより、色々やっている内にたまたまうまくいくようなことも多いと思われます。その間、母親がずっと見守っていて、そのできた瞬間にまるで自分がやったかのように「すごいすごい、やったね!」大喜びするとしたら、子どもの成功感は2倍にも3倍にも感じられるでしょう。逆に、何かができる前に「なめちゃだめ!」「あぶない!」などの声掛けを聞くことが多い子どもは大きくなって神経質になってしまうかもしれません。まして、もっといけないのは、子どもにずっと関心を向けていなくて、声掛けすることが少ない場合です。それでは、子どもは自信の持ちようがありません。

人間の赤ちゃんは、母親の世話とことば掛けによって、自分という存在に気づき、相手の存在も意識できるようになります。そして、母親の存在に一喜一憂し、心の拠り所になっていきます。それを経て、相手も自分も意思のある存在として気づいていくことになります。

赤ちゃんがハイハイできるようになると、自分の意思で動くことができるようになります。そうすると、どれくらい、状況判断できているかわかりやすくなります。食事の準備していると、食事のテーブルの方へ来る、お風呂に入る為に服を脱がし始めるとお風呂に入る気になっている、チャイムが鳴ると玄関の方へはっていく、出掛ける準備していると自分も行く気になっているなどです。自分で動けることが多くなると一緒に生活する上で、一連の流れに沿った共同行動が取れることが多くなります。それと、何かをして結果を楽しむ遊びも、より共同活動として行えるものが増えてきます。そうすると、母親の話を聞きながら活動したり、指示に応じることが増えてきます。「ちょっと待って」「座って」「押して」「投げて」「ちょうだい」「持って来て」「それ拾って」などです。そして、「お風呂からあがったら拭こうね」「どこどこまでいくよ」「かたずけるからここにいれて」「コップに入れてのむよ」などの話しかけがわかってきます。

この1歳までに、母親と子供の間で活動や対象を共有する関係が出来上がり、それが、後に記号としての言葉を共有するための土台となります。また、日本語の音声の大部分を声遊びとして、発声できるようになります。

2.物の名前がわかるようになる段階(12ヶ月~1歳6ヶ月)

 

1歳過ぎる頃、指差しが出てきます。欲しいものが高い所にあって、母親にそれを取ってほしい時指差す場合と、何かを見つけて指差す場合があります。いずれも、対象となるもののイメージがあって、それを母親と共有する表現行為です。母親は当然「○○なの?」と聞いて取ってくれたり、「そうね、○○だね!」と返すことになります。ですから、指差しは物の名前がわかり始めるきざしになります。

それが進んで、近くにあるもので母親が指差して「○○取って」と指示したり、子どもが見てるものを「○○だね」と声掛けたり、母親が遠くのお月さまを指差しながら見て「きれいなお月さまだね!」と声掛けると子どもも遠くのお月さまを見たりするようになります。そうして、物の名前が段々分って来ると、近くにあるものであれば「○○取って」と言うと持ってこれるようになったり、絵本の食べ物や動物などを「○○はどれ?」と聞くと指差すようになります。

1歳半ぐらいを境に身の回りのある物全てに名前があることに気づいて来て、爆発的に物の名前がわかるようになります。初語は1歳前後に「ママ」「パパ」「マンマ」「いやー」など言いやすいものから、出てきます。2ヶ月ぐらいは10語ぐらいで推移しますが、そのあと、急激に増え始めます。物の名前がはっきりわかり始めて、対象となる何かを見た時『あーあーあれだー』とイメージが湧いて、それを一瞬声で「~~」と表現しようとします。母親がそれを聞いて「そうだね、○○だね」と答え、発語を強化することになります。

最初は、発音がはっきりしなかったり、語尾だけだったりしますが、母親が正確の音で返すことで、段々発音も正確になってきます。最初はたまたま思いが溢れて声になって出てくるので、自発語が多いです。発語が大分増えてくると、母親が言ったことを真似して言うことも増えてきます。そして、『○○取って』『○○食べたい』などの要求時でもことばを使うようになります。そして、1歳6カ月頃には単語で100前後話せるようになります。発語の中身は物・人・キャラクターなどの名前だけではなくて、「だっこ」「ねんね」「おしっこ」などの要求語や「寒い」「熱い」「おいしい」などの感情語、「きれい」「汚い」「赤」「青」などの形容詞、「行っちゃった」「落ちた」などの動詞も出てきます。

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3.2つのことの関連性に気付き始める段階(1歳半~2歳前後)

 

発語が100語ぐらいに増えて、動詞の要求語(「取って」「開けて」「見てて」「おいで」「やって」「投げて」)が出てくると、2語文になり易いです。その一語の中に、「○○取って」「ママ見てて」「こっちおいで」など対象+動作、主体+動作、場所+動作等の意味も話し手の意図に含まれているからです。 母親の方も暗に「○○取るの?」「ママに見てほしいの?」「そっちへ行くの?」などと聞いて2語文で話すことを要求することになります。

動詞には必ず、「誰が?」「何を?」「どこへ?」「何で?」など、主体、目的、場所、手段となることばがセットになっていることに気付き始めます。子どもが「ジュース」と言えば、母親は「ジュース飲むの?」と聞くでしょう。「行く」→「お外行くの?」、「ブランコ」→「ブランコ乗るの?」、「ボール」→「ボールするの?」などと聞くことになります。その会話が繰り返される中で、2つのことが常にセットでイメージされるようになって「バス行っちゃった」「パパいない」「ママ見てて」「ボールとって」などの2語文が出てくるようになります。

2語文が多くなってくると、母親が「ジュース」と言いかけると子どもは「飲む」と答えたり、ブランコに乗っている絵を見ながら「何に乗っているの?」と聞くと子どもは「ブランコ」と答えられるようになります。「2つのことの繋がりを意識するようになると、2語文の表出だけではなく、認識の世界でも、2つの物事の前後関係や『○○は○○するもの』という用途もわかり始めます。

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「冷蔵庫からジュースを出したらその後どうしますか?」と聞いて次の『ジュースを飲んでいる』カードを選択出来たり、「マクドナルドのお店で何を食べますか?」と聞いて『ハンバーグを食べている』カードを選択出来たりすると、前後関係がわかっていることになります。

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また、「おふろで身体を洗う時に使うものは何ですか?」と聞いて『石鹸』のカードを選択出来たり、「雨が降ってきた時使うものは何ですか?」と聞いて『傘』のカードを選択出来たりすると用途がわかっていることになります。そして、象徴遊びでは『野菜を切る』『フライパンで何かを炒める』『何かを食べる真似をする』『掃除機をかける』『ブロックなどで電車を走らせる』などが出現します。

 

4.3つのことに気付き始める段階(2歳前後~3歳前後)

 

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上記の絵を見て、子どもが「くつはいている」と言い、母親が「じゃ、次の絵は何をしてるの?」と聞くと、子どもは「お散歩してる」と答えます。母親は「そうだね、お散歩してるんだね、どこを歩いているの?」と聞くと子どもは「川」と答えます。母親は「そうだね、川べりを歩いているんだね、公園に着いたら何をするの?」と聞きます。子どもは「ブランコ乗るの」と答え、母親は「そうだね、公園でブランコ乗るんだね」と答えます。

絵を見ながらでの会話ではなく、実際のシチューエーションでも同じような会話が繰り返されるわけで、それらが頭に入りこんでいくと、「公園でブランコに乗るの」という場所+目的+動作の3語文が出現することになります。

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上記の絵を見て、母親が「何がなっているの?」と聞くと、子どもは「ピンポン」と言う。母親が「そうだね、チャイムが鳴っているね、誰が帰ってきたの?」と聞いて、子どもは「パパが帰ってきた」と答えます。母親は「そうだね、パパがお家に帰ってきたね、おみやげ持っているね」と言うと子どもは「プレゼントだ!」と言います。母親が「そしてパパは何してくれるの?」と聞くと「高い高いしてる」などと答えます。

それらを繰り返して、主体+場所+動作の「パパがお家に帰ってきた」とか主体+目的+動作の「パパが高い高いしてる」などの3語文が出現します。3語文がどんどん増えてきて、『誰が何をどうする』『どこで何をどうする』『何に乗ってどこへ行く』などの3つの要素がセットになって想定されるようになると、『冷蔵庫』『冷たい』『アイス』など3つぐらいの関連する物の連想が同時に浮かんでくるようになります。

そうなると、ボーリングしようと提案すると『ピン』や『ボール』をすぐ持ってきたりするようになります。また、「雨が降っている時は何を使いますか?」と聞くと『傘』と『長靴』のカードを持ってこれるようになります。

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    また、先行・後続・展開などの3つのストーリー物語を順を追って話せるようになります。

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象徴遊びでは、『母親役になって買い物に行く』『ヒーローの主人公になって、変身をする』「蛙の真似をして跳んで回る』など、3つの要素を含んだものになります。

 

5.重文・複文が出てきて因果関係の表現が発展する段階(3歳~5歳)

 

おしゃべりがますますじょうずになってきて、「今日○○したの、それでね、○○したの、それでね、○○したの」など、「それでね」という接続詞で文を繋げて、長々と今日やったことを説明するようになります。毎日行っている○○活動の代表的なシナリオを言葉にするようになります。例えば、公園エピソードでは、「朝、くつはいて、ママと公園行ったの、シュッて滑り台したの、怖かったの」、お風呂エピソードでは、「夜、ママとお風呂入ったの、あわわしたの、1,2、3,4,5,6,7,8,9,10であがったの」、レストランエピソードでは「いらっしゃいませ、何にしますか、ハンバーガー下さい、100円です」などです。

代表的なシナリオが色々な活動でたくさん出来てきます。すると今度は、いつもとは違う今日体験したことを言葉で表現されるようになります。「犬がいたの、それでこっちから行ったの」や「公園で転んだの、血が出たの、エーンて」などです。代表的なシナリオと今体験している事の違いを色々表現できるようになって、その代表的なシナリオも日々修正されていきます。その違いを明確に表現したものとして、「今日は雨が降っているから外行けないね」という複文が出てくるようになります。

そして、「雨の日はお家であそぼ!」という雨の日のエピソードが出来上がります。いつもとは違う表現として「~だから○○できないね」という理由が明示されて、因果関係の表現が出始めます。そうした、客観的な認識で、理由の表現が出てくる前に、自分自身や身近の人のことだと、理由の表現がもう少し早く出現します。例えば、母親が「お風呂入りなさい」と言うと「まだテレビ見てるから、終わって」とか、妹が泣いていて、母親が「あらら、どうしたの?」と聞くと「ころんじゃって、泣いてるのよ」とか答えるなどです。その頃、自己主張で、わざと反対のことを言って相手を困らせたりすることが多くなります。「疲れたからやらない」「それじゃなくて、こっちをやりたかったの」「お腹すいてできない」などとやれない理由をなんだかんだ言うようになります。

客観的な認識で、理由の表現が豊富になっていくのと、自己主張でも理由を盛んに使うことが重なって「違うよこうするんだよ」と正答性を主張することが多くなります。「この子はへ理屈ばかり言ってほんとに困るんですよ」と言われる親御さんも多いわけですが、自分なりの因果関係を発見して表現しているわけで、言語力が数段レベルアップしている結果でもあります。この時期、因果関係の意識が高まっている証拠として、「なんで」「どうして」と聞いてくことが多くなります。へ理屈だったり、思い込みだったりする側面もありながら、その因果関係の表現(自己主張)をめぐって激しいバトル(会話)が常になされるわけで、理解力も表現力もコミュニケーション能力も一段と向上していきます。

友達とけんかになって「だって、先に○○君がこうしたからだよ」と言い訳をする時、往往にして、自分を正答化しがちではありますが、まずはどうしてけんかになったかのきっかけや、どのような気持ちだったのかなど自分の考えをきちっと表現できることが重要です。そうすると、母親もどのように話しかけたらいいかがわかるからです。しっかりとした、自分の考えを自己主張しつつも、相手の子の気持ちも常に配慮できる子に育てるのが理想でしょう。

物事の因果関係に着目した会話がたくさん為される中で、「風邪をひいたからお医者行こうね」「ご飯の前はお菓子食べちゃいけないんだよね」「信号で、赤は止まれ、青は進めだよ」など、一定の法則や条件による違いに着目した因果関係の表現も出てくるようになります。そうすると、比較文の理解で、「大人は大きいけど子どもは?」と聞くと「小さい」と答えたり、条件文の理解で「お腹すいたらどうしますか?」と聞いて「ご飯食べる」と答えたり、「お家でアンパンマンとか見るものは何ですか?」と聞くと「テレビ」と答えるなど、物の定義を聞いても答えられようになりす。

言語性の発達検査(LCスケール)によると、3歳後半までに通過するものとして、形容詞・動詞・ジェスチャー・語連鎖・表情・量的概念のなどの理解と文の復唱・対人的言葉の使用が挙げられています。

4歳後半までに通過するものとして、助詞と語連鎖の理解(○○してから○○して下さいなど条件文の理解)、状況画の理解と説明(このあとどうなりますか?)、推論(○まるしたらどうしますか?)、5歳後半までに通過すものとして、疑問詞の理解(いつ・誰が・どこで・何をした?)、文脈に応じた動詞の使用(○○は何するもの?)、文章の理解(短い物語聞かせて後で順番を聞く)が挙げられています。 この中で、4歳~5歳で通過すものは、先に述べてきた、因果関係の理解と表現が発展する中で獲得される言語能力とほぼ一致します。

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 上記の絵で、1枚づつ、順を追って、「障子に穴をあけています」「どんどん破いています」「そして、お母さんにおこられています」

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上記の絵で、「野原を歩いています」「そしたら、ライオンが来ました」「そして食べられてしまいました」。では「ライオンに食べられないようにするにはどうしたらいいですか?」と聞くと「木に登ればいい、そしたら、助かる」などと表現できたら、大分物語能力が発達してきていると考えられます。

 

6.現前事象から独立した言語体系が確立される段階(5~6歳)

 

言語性の発達検査(LCスケール)によると、6歳前半までに通過すものとして、受動態の理解、受動態と能動態への変換、じゃんけんのルールの説明、状況画の説明(ある場面でどうしてこのような行動をとったか?)、不合理な話し(短い物語を聞かせておかしなところは何ですか?)が挙げられています。そして、6歳後半までに通過するものとして、助詞と助動詞の理解、論理的表現(○○はどんなところが便利ですか?)、反対語、複雑な指示の理解、時間的な話し、が挙げられています。それらの課題は綜合して以下のような言語能力を示していると思われます。

① 基本的文法構造の確立

助詞と助動詞の理解や受動態と能動態の変換が可能と言うことで、6歳後半までには基本的な文法構造が確立されると思われる。

② 語彙力

日常的に使われている会話の中の語彙はほとんど理解し、使用できる。

③ 論理的な説明力

「○○はどんなところが便利ですか?」が答えられることは日常接するものについての定義がわかって説明できる。

④ 心の発達

『その人は知らないわけだから、きっとこういう行動をするはずだ』など、人の思いを推測できる能力が6歳にはかなり発達する。

⑤ 物語力

体験したことを『いつ、どんな場面で、どのようなことがあって、どういう結末になり、どうに思ったか』などと、相手にわかるように話せる能力(すこし、誇張して脚色する場合もある)がかなり発達する。LCスケールの状況画の説明で、ベランダの手すりに足をかけて紙飛行機を取ろうとしているシーンの絵があり、『この後この男の子はどうなりますか?」と問う課題があり、4歳後半になるとほとんどん子が「落ちちゃう」と言いますが、4歳前半ぐらいだと、その絵のまんま答えて「飛行機が飛んで行っちゃう」と答えます。それは、絵のまんま答えると間違えではないのですが、「男の子はどうなりますか?」と聞いているので、物語能力が進んでいる子はほとんど推測して「落ちちゃう」と答えます。それだけ、話が物語るように発達していくようです。つまり、おちとか展開を自然と考えるようになるみたいなのです。

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上記の絵を見て、「何が変ですか」と聞いて、「アヒルがボートに乗ってるのが変」「道路で魚釣りしてる、道路じゃ釣れないでしょう」「キリンなのに鹿の角が生えておる」などと答えられると、普通と違う点の説明力が高いと言えます。

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上記に絵を見て「豆まきの時に追い出されるものは何でしょう?」「自分の体で、声を聞くときに使うものは何でしょう?」「焼けるとプーっと膨らむものはなんでしょう?」などの問題を作れたら、物の定義がかなりわかっていることになります。

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上記の絵を見て、ストーリーを順に、細かくスラスラと話せるようであれば、物語力は高いと言えるでしょう。
それらの全ての能力が発達することにより、目の前の事象から離れて、人の話を聞いただけでその情景を想像でき、それについてコメントできたり、以前に体験したことやあることについての考えを人に伝えられたりできるようになるのではないかと考えられます。